弁護士法人萩原総合法律事務所(茨城県筑西市・常総市・ひたちなか市) | 弁護士コラム:不動産の遺産分割②
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弁護士コラム

不動産の遺産分割②

不動産の遺産分割②

前回の事例の続きです。

 

事 例 2

B女は相続法改正により、配偶者が優遇されるようになったと耳にしました。そこで、次回調停期日の前に、「配偶者」として何か特別の主張をすることができないか、弁護士事務所に相談に来ました。

問題

B女は「配偶者」として何か特別の主張をすることができるでしょうか。

解説

令和2年4月1日から改正民法が施行されたため、A男が令和2年4月1日以降に亡くなっている場合、以下の「居住権」を主張できます。

 

(1)短期配偶者居住権(民法1037条~1041条)

相続開始時に相続財産となる建物に無償で住んでいた場合、最低6カ月の短期的な居住権が認められます。

この短期配偶者居住権の良い点としては、例えばA男がこっそり遺言を残していて、B女が不動産に住み続けることを拒否する意思表示や、第三者に不動産を遺贈する遺言を作成していたとしても、最低6カ月の居住が保証されるところにあります。

ただ、遺産分割終了までは、遺産不動産への無償での使用貸借が最高裁で認められているため、B女がわざわざ短期配偶者居住権を利用することの意義は低いと思います(最高裁判例平成8年12月17日民集50巻10号2778頁)。

 

(2)配偶者居住権(民法1028条~1036条)

配偶者居住権が認められれば、原則的に、配偶者の「終身」、無償での居住権が認められるため(民法1028条1項、民法1030条)、B女の希望が叶います。

成立するための要件としては、 ①相続開始時点で、相続財産である不動産に居住していること、かつ、②(a)配偶者が配偶者居住権を取得する旨の遺産分割が出来た場合、或いは(b)配偶者居住権をA男から遺贈されていた場合となります。

今回、(b)はなく、C女はB女の不動産居住に協力的ではないため(a)は望めません。

しかし、遺産分割で成立しない場合も、遺産分割審判において、配偶者居住権が認められることがあります。(民法1029条)。

具体的には①共同相続人間で、配偶者居住権について合意が成立しているとき、若しくは②配偶者が配偶者居住権の取得を希望した場合に、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお、配偶者の生活を維持するために特に必要があると認める時。の要件を満たす場合です。

今回は、②として、「特別の必要」が認められれば、配偶者居住権が審判で認められます。

配偶者居住権が認められれば、B女は、無理にマンションを所有する必要は無くなります。

配偶者居住権の評価額によって、A男の預金の分配等も変わってきますが、配偶者居住権が認められることで、B女の最大の望みである終身マンションに居住することについては、叶えられそうです。

ただ、配偶者居住権は新設されてそれほど期間が経っていないため、要件となっている「特別の必要」の具体例となる審判例はまだ積み重なっていません。

B女として、「特別の必要」と出来る事情としては、年齢や、居住期間の長さ、転居に伴う負担が過大であること等、生活を維持するためにマンションが必要不可欠であることになります。

他方、C女は配偶者居住権が設定されることで、マンションの所有権を得ても、B女の終身の無償使用を認めなければならず、配偶者居住権付き不動産を購入してくれる人も少ないであろうことから、売却もできずで、過大な負担があります。仮にB女とC女の年齢が近い場合は、C女にとってはほとんどうま味のない話になってしまいます。

そのようなC女の負担を考慮してもなお、B女の生活維持のため、特に必要があると認められなければ配偶者居住権は認められません。

従って、配偶者居住権が主張できるから即安心とは言い切れません。

「特別の必要」について、十分に主張できることを整理しなくてはいけないため、弁護士等専門家への相談をお勧めします。

 

(3) 仮に、C女の合意が取れて、あるいは「特別の必要」が認められて配偶者居住権をB女が得られた場合、以下のような問題も出てくることがあります。

例えば、固定資産税をどちらが負担するか等で揉めることがあります。なぜなら、固定資産税は所有者C女に請求が来るため、家に居住出来ないC女としては、負担をしたくないと思うでしょう。そのため、配偶者居住権をB女に設定する際は、トラブルを防止するために、固定資産税をどちらが払うか等も決めておかなくてはなりません。

さらに、B女が年をとって、マンションの配偶者居住権を手放して施設に入所したいと思った時、C女に配偶者居住権を買取ってもらえるのかも問題になります。C女が買い取りを拒否した場合、B女は配偶者居住権を放棄することができますが、B女が放棄したことで、C女は負担なく居住権を取得することになります。そうすると、C女に贈与税の支払義務が発生する可能性があり、贈与税の支払をめぐってトラブルが起こりかねません。

配偶者居住権は、一つの不動産の所有権と居住権が別人に帰属することで、所有者と居住者の関係性が続いていきます。そのため、細事を詰めておかなくては、せっかく収まった紛争を再燃させかねない可能性もあります。

配偶者居住権を考える場合は、一度、弁護士等に相談されることをお勧めします。

監修者情報
弁護士野田 幹子

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